2014/10/23 UPDATE
そんなお節介なことを誰が考えるかと思いましたが、健康ですから、厚労省のホームページを開いて見ました。歩き方から、どれだけの速度で一日何歩歩くべきなのかまで、詳しく書いてありました。日常生活における歩数は男性9,200歩、女性8,300歩で、もう1000歩足りないそうです。この根拠は、体重60kgの者が、時速4km(分速70m)、歩幅70cm、で10分歩くと、消費エネルギーは30kcalとなり、1日当たり300kcalのエネルギー消費は、1万歩に相当するからだそうです。 まあ、健康と言っても厚労省のことだから、「メタボやロコモにならない」程度だと思っていましたが、「運動は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率を下げる。また、運動はメンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらす。更に歩行は、高齢者の寝たきりや死亡を減少させる」とまで書いてありますから、これこそ国民的「健康で正しい歩き方」かもしれません。
では、正しい歩き方とは、どんな歩き方でしょうか? これも同じ厚労省のホームページにちゃんと書いてありました。「視線は遠くにあごは引いて、胸を張り、背筋を伸ばして、肩の力を抜き、脚を伸ばして、かかとから着地し、歩幅は出来るだけ広くとって、腕は前後に大きく振って歩く」、これが厚労省お勧めの健康で正しい歩き方です。でも、これだけで、健康で、正しいと言えるのでしょうか。
人間の体は、負荷により強く肥大し、無くなると弱く萎縮します。例えば、寝たきりになると、骨への負荷が無くなり、骨量が減って骨は折れやすくなります。しかし、歩行出来るようになると、骨量は増え丈夫になり骨折は減ります。ところが、過剰な負荷を加えると、骨を強くするどころか、急速に骨を吸収化し、ついには疲労骨折を起こしてしまいます。ですから、正しい健康な歩き方を考える時には、歩き方(質)と、速度(量)、時間のバランスを忘れてはなりません。
また、目的とそれに沿った評価が大切です。子供が丈夫に成長するため、メタボの人が短時間に減量するため、高齢者の骨折予防のためと目的によって、正しい健康的な歩き方は全く異なります。従って、歩行(質x量x時間)と人間に及ぼす影響(個体差・個体の状況・周囲の環境)の両面から評価しなければならなりません。 そこで、メタボやロコモを予防する歩き方については、厚労省お勧めの歩き方を参考にして頂くことにして、高齢者向けの楽な歩き方を考える事にします。 まず、歩行周期のリズムを一定に保ち、運動と位置のエネルギーを上手に交換してエネルギー消費を抑えます。前後、左右、上下何れの方向にもリズミカルに動きます。ぎくしゃくして動きが中断すると、再度加速するためにエネルギーが消費されます。次に、遊脚期の足の振り出しは、下肢の振り子運動に合わせた速度で行います。足を振り抜く為に、足を振り抜くために持ち上げますが、つま先が引っかからない程度に止めます。 でも、こんな事を考えて歩こうとすれば、足が前に出ないどころか、つまずいて転んで骨折します。ですから、始めはゆっくりで構わないので、表に出て歩いてみましょう。まず、ゆっくり同じ速度で歩くように心がけてみましょう。脚を気楽に振り出し、少し前後に手を振ってみて、調子を取れるようになれば、それで良いのです。慣れて不安が少なくなれば、周りを見渡してみて、風景が楽しめるようになれば、個人に適した歩き方(質)です。後は翌日、又出かけるかと思える程度の疲れ方が、時間(量)を決めてくれます。最後に、何のために歩こうかと楽しめるようになれば、受ける影響の面からも合格です。 このように、健康に良い正しい歩き方にも色々あるように、健康によい靴についても、重いか軽いか、そこが厚いか薄いか、つま先が上がっているかなど色々議論はあります。しかし、振り出し一つ考えてみても、軽ければ下肢の振り子運動の固有周期は短くなり、ある程度の重さはあった方がリズミカルに歩けます。ですから、目的に沿った、履いてみて、歩いてみて気持ちの良い靴が一番です。さあ、自分にあった靴を捜しに行きませんか。
日本靴医学会、日本足の外科学会 名誉会員
昭和45年:慶應義塾大学医学部卒業、整形外科医
平成11年:第13回日本靴医学会会長、第24回日本足の外科学会会長
平成11年:第20回国際足の外科学会副会長
平成20年まで:慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター・整形外科 教授
平成23年まで:日本靴医学会 理事長、日本足の外科学会 理事
研究分野:足の外科、外反母趾
主な著書:外反母趾を防ぐ・治す(講談社)、足のクリニック(南江堂)
主なテレビ出演:今日の健康(NHK2002/7/8、2006/3/1)、世界一受けたい授業
(日本テレビ2007/8/25)など
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