2015/06/3 UPDATE
外反母趾の原因には、遺伝、女性、ハイヒールの三つが挙げられていますが、本当のところは良く分かりません。私の経験から、ハイヒールを履く人が外反母趾に成り易い、一度外反母趾なるとハイヒールを履くのを止めても外反母趾が進行すると言う二点に注目して、原因を考えてみました。 結論は、「母趾が外反するから、外反母趾になる」でした。「当たり前だ」と叱られそうですが、母趾が外反位にあると、歩くという日常動作で、母趾の外反が増悪するのです。逆に言うと、最初のきっかけとなる母趾の外反を防止できれば、遺伝的に外反母趾に成り易い女性でも外反母趾の予防が可能となります。
最初の母趾の外反は、先天性(若年性外反母趾)に起こる事もありますが、普通はハイヒールやパンプスが原因です。靴先は多かれ少なかれ外側に向かって傾斜(外ぶれ角)しています。人間の母趾外反角は、普通5度から10度ですが、ハイヒールやファッショナブルなパンプスでは外ぶれ角が30度を越える事も珍しくありません。普通の人が、パンプスやハイヒールを履いたら何が起こるでしょうか。ご覧のように、靴に押されて母趾は外反を強制されます。この様に、きっかけとなる最初の母趾の外反は、外ぶれの靴によって起こります。
最初の母趾の外反は、先天性(若年性外反母趾)に起こる事もありますが、普通はハイヒールやパンプスが原因です。靴先は多かれ少なかれ外側に向かって傾斜(外ぶれ角)しています。人間の母趾外反角は、普通5度から10度ですが、ハイヒールやファッショナブルなパンプスでは外ぶれ角が30度を越える事も珍しくありません。普通の人が、パンプスやハイヒールを履いたら何が起こるでしょうか。ご覧のように、靴に押されて母趾は外反を強制されます。この様に、きっかけとなる最初の母趾の外反は、外ぶれの靴によって起こります。
ちょっと難しい話をしましょう。高校の力学の授業で習ったベクトルを思い出して下さい。 外反母趾角が30度に成るハイヒールで歩くと、踏み返しで母趾には外反ベクトル、第1中足骨には内反ベクトルが生じます。 屈筋腱は中足骨軸に並行で、MTP関節の回転軸は直行します。屈筋力の回転軸に直行する分力(回転ベクトル)は屈筋力の√3x1/2、回転軸に平行で外反方向に働く分力(外反ベクトル)は屈筋力の1/2となります。踵が床から離れれば全体重が母趾に掛かるので、屈筋力は全体重を支えるのに必要な大きさの2/√3倍になり、母趾を外反させる力は屈曲力の1/2となるので、全体重を支えるのに必要な大きさの1/√3倍になり、相当強い外反力が働くことになります(Fig_2)。 また、MTP関節の回転ベクトルは中足骨骨頭を押すので、更に第1CM関節の回転ベクトルと中足骨の内反ベクトルを生じます。これらのベクトルは中足骨を内反、屈曲します。 余りにも大ざっぱな解析ですが、ハイヒールの中で母趾が外反位になったまま歩くと、相当大きな母趾外反ベクトル、中足骨内反ベクトルを生じ、第1中足骨内反、母趾外反という病的形態が進行し、外反母趾が固定化することに疑いはないでしょう。
外反母趾にならない靴の条件は
1)母趾が内側から押されない
2)母趾が前から押されない
3)第一中足骨内反を抑える
事です。真っ直ぐな母趾が素足の時に外反することはありません。だからといって、靴を履かずに外出する訳にはいきませんから、この条件に即した靴を選ばなければなりません。
1) 先端(ポイント)が母趾側に寄っていて、外振れ角が10度以下の内振れの靴。スクエアーの靴。履いた時に母趾が横から押されない靴。(図3)
2) 足が前に滑らない靴。ハイヒールではヒールが5cmまで、斜台の前端が趾の付け根、MTP関節と後端が踵の前端と位置が合い、足と靴のカーブと合っていて、ストラップがあり、中敷きが滑りにくい。
3) ボールガース、インステップガースが合っていて緩みがない靴そんな靴が見つからない場合は、おしゃれな靴を履く時間をなるべく短くしてください。
日本靴医学会、日本足の外科学会 名誉会員
昭和45年:慶應義塾大学医学部卒業、整形外科医
平成11年:第13回日本靴医学会会長、第24回日本足の外科学会会長
平成11年:第20回国際足の外科学会副会長
平成20年まで:慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター・整形外科 教授
平成23年まで:日本靴医学会 理事長、日本足の外科学会 理事
研究分野:足の外科、外反母趾
主な著書:外反母趾を防ぐ・治す(講談社)、足のクリニック(南江堂)
主なテレビ出演:今日の健康(NHK2002/7/8、2006/3/1)、世界一受けたい授業
(日本テレビ2007/8/25)など
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